業務用冷蔵庫の処分完全ガイド|産業廃棄物の手続きから売却まで

業務用冷蔵庫の処分完全ガイド|産業廃棄物の手続きから売却まで

飲食店やスーパーなどで使用される業務用冷蔵庫。いざ処分するとなると、「家庭用冷蔵庫と同じでよいのだろうか?」と疑問に感じる方も多いでしょう。

業務用冷蔵庫は家電リサイクル法の対象外で、法律に基づいて「産業廃棄物」として適正に処理しなければなりません。また、フロンガスが使用されている製品の場合は、フロン回収も義務づけられています。

この記事では、業務用冷蔵庫の処分方法5選と、法律を守るためのポイントを解説します。また、処分するタイミングの目安や、悪質な回収業者を見分けるポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

業務用冷蔵庫の処分方法5選

業務用冷蔵庫の処分方法は多岐にわたります。廃棄費用をかけて処分する方法から、買取や譲渡で利益を得る方法まで、それぞれの特徴を理解し、状況に合った最適な方法を選びましょう。

処分方法 費用の目安 手間 おすすめな人
産業廃棄物収集運搬許可業者 2万円~10万円程度 法令順守を徹底したい事業者
厨房機器専門業者 0円~5万円程度(収益ありの場合も) 買取や無料回収を狙いたい人
不用品回収業者 数万円~ まとめて処分したい人
他のオーナーに譲渡・売却 0円 × 廃棄費用をかけたくない人
居抜き物件として譲渡 0円 × 店舗の売却を有利に進めたい人

※手間:○=手間ゼロ・△=やや手間がかかる・×=手間がかかる

方法1:産業廃棄物収集運搬許可業者に依頼する

業務用冷蔵庫は、事業活動から排出される「産業廃棄物」に分類されます。そのため、最も確実で法律に基づいた処分方法は、都道府県から「産業廃棄物収集運搬業」の許可を得ている専門業者に依頼することです。

産業廃棄物を排出する事業者は、産業廃棄物マニフェスト(管理伝票)の発行が義務づけられており、このマニフェストによって、廃棄物が適正に運搬・処理されたことを確認する必要があります。

ポイント

また、フロンガスが使用されている場合は、業者がフロン回収の許可(第一種フロン類回収業)も持っているか、またはフロン回収業者と連携して適切に処理を進めてくれるため、法令違反のリスクを最小限に抑えることができます。

メリット デメリット
法律に基づいた最も確実な処分が可能 処分費用が比較的高めになる場合がある
フロン回収まで含めて適切に対応してくれる 産業廃棄物マニフェストの発行・記載が必要

方法2:厨房機器専門の業者に依頼する

状態や年式が比較的よい製品であれば、厨房機器専門の業者に依頼することで、高額で買い取ってもらえる可能性があります。厨房機器専門の業者は、業務用冷蔵庫を始めとする金属製品を再販またはリユースすることで収益を得ています。

たとえ買取に至らなくても、再利用価値が見込まれる場合は無料での回収に応じてくれるケースも多く、廃棄費用を抑えたい場合に有効な選択肢です。

注意

ただし、業者を選ぶ際は、産業廃棄物収集運搬業の許可やフロン類回収業の登録の有無を必ず確認し、不法投棄を行う悪質な業者の見極めを慎重に行うことが大切です。

メリット デメリット
状態によっては買取してもらえる(利益になる) 買取対象外の場合は回収費用が発生する
再利用価値があれば無料回収の可能性がある 悪質な業者を見極める必要がある

方法3:不用品回収業者に依頼する

閉店や移転などに伴い、業務用冷蔵庫の他にも、テーブル、イス、その他の厨房機器など、多数の不用品をまとめて処分したい場合に便利なのが不用品回収業者への依頼です。

回収対象が幅広いため、複数の業者に依頼する手間が省け、「とにかく急いで処分したい」という事情がある場合にも、迅速に対応してもらえることが多いです。

大型の業務用冷蔵庫の処分費用は数万円かかることもありますが、不用品が多い場合は定額パックを利用することで、お得に回収してもらえる可能性があります。

注意

ただし、一般家庭の不用品回収のみを対象としている業者もあるため、必ず産業廃棄物の回収に対応しているか事前に確認することが重要です。

メリット デメリット
厨房機器など他の不用品もまとめて処分できる 事業ゴミ回収の許可を持つ業者を選ぶ必要がある
急いで処分したいときに柔軟に対応してもらえる 費用は大型製品であり数万円かかることが多い

方法4:他のオーナーに譲渡・売却する

使用に問題がなく、まだまだ使える状態の業務用冷蔵庫であれば、他のオーナーに譲渡する方法も検討できます。飲食店やスーパーなど、業務用冷蔵庫の需要は常に高いため、知り合いのオーナーやこれから開業を予定している人に声をかけてみるのもよいでしょう。

廃棄費用をかけずに済むうえ状態や価値次第では買取という形で利益を得られる可能性もあります。

カタニャン

大型の業務用冷蔵庫は配送費用が高くなる可能性が高いので、どちらが負担するか、事前に話し合っておこう!

メリット デメリット
廃棄費用がゼロになる 譲渡先・買い手を見つける手間がかかる
状態がよければ利益を得られる可能性がある 確実に処分できる方法ではない

方法5:居抜き物件として次の入居者に譲渡する

店舗を閉店する際、内装や設備をそのままにして売買または賃貸する契約を「居抜き物件」と呼びます。業務用冷蔵庫を始めとする設備を店舗に残すことで、居抜き物件として次の入居者に譲ることが可能です。

新しいオーナーにとっても、設備や機器が揃っている居抜き物件は、開店までの時間を短縮できるため、大きな魅力です。

カタニャン

業務用冷蔵庫などの設備が付随していることで、店舗全体の価値が高くなる可能性も高くなるよ!

メリット デメリット
処分費用がゼロになる 居抜きでの買い手・借り手が見つかる必要がある
店舗の査定額アップにつながる可能性がある 契約・売却までに時間を要する場合がある

処分前に確認!法律を守るためのポイント2つ

業務用冷蔵庫を処分する際、事業者が特に注意しなければならないのが、法令に基づいた「フロン回収」と「マニフェスト」の管理です。これらを怠ると、法律で罰せられる可能性があるため、正しい知識を持っておくことが不可欠です。

フロンガス使用の有無を確認し「第一種フロン類回収業者」に依頼

業務用エアコンや業務用冷蔵庫などの特定製品にフロンガスが使用されている場合、廃棄時にフロン類を回収し、破壊処理を行うことが「フロン排出抑制法」で義務づけられています。

フロン回収が必要な製品の廃棄は、都道府県知事の登録を受けている「第一種フロン類充塡回収業」の許可を持つ業者に依頼しなければなりません。

注意

依頼する業者が、産業廃棄物収集運搬業の許可と、第一種フロン類回収業の両方の許可を持っているか、またはフロン回収業者と適切に連携して処理を進めてくれるか、必ず確認しましょう。

産業廃棄物「マニフェスト(管理伝票)」の正確な記載

業務用冷蔵庫を産業廃棄物として排出する事業者は、廃棄物の適正な処理を確保するため、業廃棄物マニフェスト(管理伝票)を発行しなければなりません。

マニフェストには、日付、排出事業者、運搬・処理業者の情報、産業廃棄物の情報などを正確に記載する必要があります。

注意

故意でなくても虚偽の記載があれば法律で罰せられることがあるため、記載漏れや間違いがないように細心の注意を払いましょう。

マニフェストの扱いに不慣れな事業者も多いため、まずは産業廃棄物に対応した回収業者に相談し、無料見積もりの段階でマニフェストに関する説明を十分に受けることをおすすめします。

業務用冷蔵庫を処分するタイミングの目安

家庭用冷蔵庫の寿命が10年程度と言われるのに対し、業務用冷蔵庫の寿命は明確には定められていません。しかし、家庭用よりも長く使える場合が多いです。

業務用冷蔵庫は、家庭用よりも耐久性が高く設計されており、頻繁に仕様が変更されることも少ないため、部品の保有期間も比較的長くなっています。そのため、重大な不具合が出た場合でも、メーカーのサポートを受けることで即座に買い替えなくて済む場合もあります。

しかし、飲食店やスーパーにとって、業務用冷蔵庫の故障は業務に大きな支障をきたし、死活問題に発展することもあります。以下のような前兆が見られたら、メンテナンスや買い替えを検討するタイミングと考えられます。

  • 冷えが著しく悪くなった:庫内の温度が設定どおりに下がらない、または一定しない。
  • コンプレッサーから異音や大きな音がする:通常時とは異なる音が頻繁に出るようになった。
  • 電気代が以前より急に高くなった:冷却のためにコンプレッサーが常に稼働している可能性がある。

重大な不具合が出る前に、余裕を持って対応を進めるのが賢明です。

悪質な回収業者を見分けるポイント

業務用冷蔵庫の処分を依頼する際、悪質な業者を選んでしまうと、不法投棄や追加費用の請求といったトラブルに巻き込まれる可能性があります。信頼できる業者を選ぶためには、以下の点を徹底して確認してください。

  • 許可証の確認
    産業廃棄物収集運搬業の許可証、フロン回収が必要な場合は第一種フロン類回収業の登録証を保有しているか確認。
  • 見積もりの金額
    相場に合った金額になっているか、総額が明確に記載されているか確認。
  • マニフェストの説明
    マニフェストの発行や運用について、明確でわかりやすい説明があるか。マニフェストに関する説明を曖昧にする業者は危険。

カタニャン

信頼できる業者を選ぶことが、トラブルなく適正に処分するために重要だよ!

業務用冷蔵庫の処分に関するよくある質問

ここでは、業務用冷蔵庫の処分や売却を検討する際に、よくある質問を紹介します。費用の相場も事前に確認しておくと安心です。

処分に費用はどのくらいかかりますか?

業務用冷蔵庫の処分費用は、家庭用のように家電リサイクル法で一律に定められたリサイクル料金だけではありません。

業廃棄物としての処分費用に加え、フロンガスの有無、製品の種類、サイズ、運び出しの難易度(階段の有無など)によって大きく変動します。

処分費用相場(目安)

区分 処分費用相場(目安)
ノンフロンの業務用冷蔵庫 20,000円~40,000円
フロン使用の業務用冷蔵庫 50,000円~100,000円

また、種類ごとの費用相場は以下のとおりです。

業務用冷蔵庫の種類 処分費用の一例
縦型2枚扉・コールドテーブル2枚扉 18,000~22,000円
縦型4枚扉 38,000~45,000円
ショーケース 15,000~18,000円
製氷機 10,000~15,000円

できるだけ高く買い取ってもらう方法はありますか?

業務用冷蔵庫の売却を検討する際は、査定額を上げるためのポイントを把握しておきましょう。一般のリサイクルショップよりも、専門的な知識と取引数が多い業務用機器の買取業者に相談するのがおすすめです。

買取価格は、以下の点によって大きく変動します。

  • メーカー:ホシザキ、フクシマガリレイ、ダイワなどの有名メーカーの製品は特に人気があり、高額査定につながりやすいです。
  • 年式:製造から間もない、年式の新しい製品ほど高い評価が得られます。
  • 容量:縦型で300L~500Lの製品や、調理台としても使えるコールドテーブル(100L~200L)は一定の需要が見込まれます。
  • 冷凍温度:冷凍温度の低い高性能な製品の方が高額査定となる場合があります。

ルールとマナーを守って業務用冷蔵庫を適正に処分しよう

業務用冷蔵庫の処分は、事業者としての責任を伴う産業廃棄物の管理行為です。家電リサイクル法の対象外であるため、廃棄の際にはフロンガスの回収やマニフェストの発行など、法律で定められた手続きを正しく行う必要があります。

これらを怠ると、たとえ意図せずとも罰則や行政指導の対象になるおそれがあるため、必ず許可を持つ信頼できる業者に依頼することが大切です。

また、状態のよい業務用冷蔵庫であれば、買取や譲渡を活用してコストを削減する方法もあります。複数の業者に見積もりを依頼し、費用だけでなく「説明の丁寧さ」や「許可証の有無」も比較することで、より安心で納得のいく取引が可能です。

さらに、店舗の閉店や移転の際には、居抜き物件として設備ごと引き渡す選択肢も検討しましょう。廃棄費用を抑えられるだけでなく、店舗の価値を高めることにもつながります。

業務用冷蔵庫の処分は、「法律を守る」ことと「コストを抑える」ことの両立がポイントです。
ルールとマナーを守りながら、あなたの店舗や事業にとって最も効率的で安全な方法を選び、スムーズな整理を進めましょう。